葵タワーで踊る!「ばら色の人生」こどもとワークショップについて
葵タワーで踊ろう!「ばら色の人生」が終演しました。今公演は、正直に怖くて辛くて逃げ出したい気持ちもありました。しかし、こども達の純粋な眼差し、ボクの事を心から信じてついて来てくれた。彼らの気持ちがこの舞台の成功を物語っています。自分自身のまとめ、今後の方向を考える為に綴ります。かなり長くなると思います。

●「アート&ダンス」

今回、財団からの依頼は、「こども達に美術ワークショップをする」、「舞台美術を作る」でした。しかし、募集要項では「キッズ・アート&ダンス」として記載していました。そうですアートの後ろに「ダンス」とはっきり書いているではないですか!そうとも知らず、数回のワークショップを開催していたのですが、何だかこども達の様子が少し違う・・・。ある子が言いました「いつ踊るの!?」えっ?えーーー?
さあ!大変です。ここから新しい形でのワークショップがはじまります。

●「こども達には嘘をつかない」

ボクは振付けは出来ません、以前から、美術家が振付けするのもおもしろいと思っていましたが、しかし状況が違う、子供達はアートとダンスを一緒にすると思っていたので、こども達に正直に伝えました「ボクは振付けは出来ないが、美術を通して素敵な舞台を作ろう、そして君たちが主役として美術館に”ふしぎな魔法”をかけ、大人達にとんでもないいたずらしよう!」と言いました。

●「こどもたちとの境界線:しんたくん編」

今まで、こども達とはある境界線を引き、美術家と参加者との関係を維持して来ました。ボクは境界線をいつも意識しています。それは「舞台」と「観客」との境界線、「人」「空間」との境界線、羊の放牧も然り。様々なシチュエーションの中で「見えない境界線」を意識しながらモノ作りをしています。

今回のワークショップでは、実験的にボクの事を「しんたくん」と呼んでね!と伝えました。昨年、近江八幡での夏休みワークショップで、小学1年生の男の子が、いつもボクに「しんたくん、これどうしたらいい?」「ねえねえしんたくん・・しんたくん」と・・・。いつもは「しんたさん」が通称でしたが、彼は友達感覚で接してきました。しかし、彼との交流の中でふしぎな繋がりを感じられ、心地いい時間と空間が生まれました。

で、いつかワークショップで「しんたくん」で実験したらどうなるのか!?と考えていた所、今回のワークショップで実現する運びと成った訳です。今回は子供達との「境界線の位置」を少しだけボクの方にずらす事によって何かが生まれる事を期待していました。初めはこども達も戸惑っていましたが、徐々に「しんたくん」に馴れ、親しみを込めて呼んでくれる様になりました。この事が最終的に舞台で素敵なアイデアの源になるとは到底思いませんでした・・・。

●「理科と美術」

振付家の山田珠実さんがメールで「人間の骨の数」「血液の循環」「皮膚呼吸」などの抽象的で彼女らしい詩的なテキストを送って来ました。で、ボクが考えたのは、静岡市美術館は5月にOPENしたので、美術館自体を赤子のイメージとして考えようと思いました。そして美術館全体を生まれたての心臓の鼓動、子宮や人体として表現出来る方法を模索しました。

まず子供達には「血管」の中に存在する「赤血球と白血球」をイメージして制作する事を伝えます「血管椅子と血管トンネル」が出来ました。そして体内に宿る「内蔵」をイメージして作る作品「体内衣装」「ふしぎな細胞」「内蔵クッション」「背骨Tシャツ」「まくら細胞」「赤血球帽子」「ふしぎな心臓」「ホネホネ流木ダンス」などが生まれました。みんなで人体図鑑を見て、人体のふしぎな形状を観察したり、人の心臓の音を聞いたり、脈を測ったり、背骨をさわったりしながら、人の温もりを感じる作品が沢山生まれたと思っています。教育現場でも体感出来る理科の実験があればおもしろいですね。

●「即興とワークショップ」

ボクの美術ワークショップは、あるプランに沿って資材を準備して開催します。参加者が気持ちよく制作出来るスペースを作るのもワークショップの一部として考えています。これらの準備を経てWSを開催しますが、時には何かパプニングがあったり、参加者の要望に答える為には、「瞬間的な即興」がとても大切だと実感しています。

今舞台は、1日4公演を予定していました。約50分の作品を4回です。(当初は約30分程度の公演を予定していた)美術館での子供達のリハーサルは珠実さんが振付けをして、最終的に完成する方向で話し合っていました。しかし、学校がありお休みする子、風邪でお休みする子、習い事があるから途中で帰る子等が出て来て、なかなかリハーサルがうまくいきませんでした。もちろん急に振付けをしてもむずかしい状況で、子供達の持続力を考えると振付けより即興で何かする方がおもしろいと言う話し合いになりました。JCDNの佐東さんが、「しんたさんのワークショップ風景をそのまま舞台に上げたらおもしろいのでは」と言いました。いやいや言葉では簡単ですが、舞台の怖さを知っているボクはどこまで出来るか心配で眠る事が出来ませんでした。しかし、本番まで2日。その方法を取るしか選択余地がなかったのです。

●「即興と4つの舞台公演」

ボクは美術家です。同じ事を4公演する事はあまり好ましくない。もちろん子供達の状況、集中力を維持する為、毎回ワクワク出来る舞台構成を考えなければ持続しないと思っていました。そして考えたのは4公演全て違う即興ワークショップをする。しかもボクが全部考えるのではなく、子供達のアイデアを中心に意見を出し合い発展させる方法をとりました。しかし1つ大きな問題がありました、個人的に美術家が表舞台に出るのを否定していたので、ボクが舞台に出演する事に非常に抵抗がありました。(※裏方の美学を提唱しているので!)しかしながら、そんな事を言っている場合ではなく、舞台の目の前まで迫っていました。

4回公演の流れをひとつひとつ説明します。

1公演(まくら細胞)13:00 〜
ボクが太鼓を叩き、子供達は「まくら細胞」で美術館をぞうきん掛けのように掃除しながら出て来る。途中でぴょんぴょん飛びながら遊ぶ。(※ボクも)最後はまくら投げ大会。これはいつもワークショップで行っているイメージ。最後に「いろはに白血球」の歌を血管椅子のまわりで歌いながら血管トンネルを通過してはける。

「いろはに白血球」
いろはに はっけっきゅう ちきゅうをふたまわり ・・・・5りっとる えいやー

子供達がかなり緊張をしていたので、緊張をほぐす為、本番中にミュージアムショップカフェに子供達をぞろぞろ連れて行き、コップに水を入れ一人でゴクゴク飲んだ。子供達はびっくり。そこから何とか緊張も揺るぎ、いつもの子供達の笑顔が見る事ができた。ちなみに楽屋で「しんたくん、なんで飲んだの!?、飲んだらダメだよ!」とダメ出しがある。で、反省点としては、いつものワークショップは「ぼくの言葉」がある。この公演では太鼓の音だけで子供達を誘導してしまった。これが緊張した理由なのか?少し考える・・。

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本番の合間にも何か作っているこどもたち

2公演(チャバチャバくっせー)14:30〜

前公演の反省を含め、いつものようにお話をしながら舞台に出る事にする。楽屋でこどもたちと次に何をするか相談する。3回目のワークショップでKちゃんがペットボトルに静岡の茶葉を入れ、マラカスのように遊んでいたのでこれを使う事に決定!!「静岡民族楽器チャバチャバ」です。これで色々とリズム遊びをする。ある女の子がフタを開けてボクに匂いを嗅がせた「くっさー」と言うと、子供達は大笑い。そして名曲が生まれる!

「ちゃば、ちゃば、くっせー」「ちゃば、ちゃば、くっせー」

音階はミニガムランのタラタラタッタで決定。あとはこれのアレンジ。舞台まで約10分。即興で考える、お客さんに匂いをかがせよう!そして「くっさー」と言ってもらう事にする。最後にミュージアムショップで「チャバチャバ」を陳列して終わり。かなりこれが受けた。こどもたちも楽屋に戻っても歌っている。いい流れが来たぞ。
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■インターミッション

2公演と3公演の間に約2時間ぐらい休憩ある。これは静岡にある別のダンスチームが葵タワーの前で路上パフォーマンスをする為の時間帯。子供達と何かしようと話し合いの結果、羊を持って葵タワー前で放牧する事になる。みんなで羊を持って歩いている内に変な歌が出来上がった。「メリーさんの羊」の替え歌で「しんたくんの羊」。

”しんたくーんのひつじ、ひつじ、ひつじ、しんたくーんのひつじ、かわいいなー”

これは1番、2番があって

”しんたくーんのひつじ、ひつじ、ひつじ、しんたくーんのひつじ、ぶさいくだー”

こどもは酷い事がすきです。で、放牧をしながらみんなでダンスを見る。とつぜん子供達が羊を持って飛び跳ねたり、踊ったりした。これにはびっくり。タワー周辺もダンスあり、羊で踊る子供達アリでカオス状態。これはおもしろい!楽屋に戻り、これを舞台に上げようと提案する。もちろん歌とダンスで!
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3公演(しんたくんの羊)17:00〜

ボクが太鼓を叩き、子供達が羊を動かしながら「しんたくんのひつじ」を歌い出します。観客から手拍子が来る。(想定外)ある空間で体を隠し、羊を出しながら羊の鳴き声を「メエー、メエー」と叫ぶ。そしてこどもたちが静かに出て来て舞台中央に羊をゆっくり放牧する。そのままうろうろしながら「メエー、メエー」と鳴きながら観客にも鳴き声を強要する。舞台は「羊の鳴き声」に包まれて終わり。これはかなりおもしろい即興舞台になった。楽屋に戻り、最後の公演に向けてみんなで考える。
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4公演(即興コンテンポラリーダンス)18:30〜

羊の放牧がかなりおもしろかったので、次のパフォーマンスを考えるのが大変。この時点でボクの許容範囲は既に超えている感じ。精神的にも肉体的にもかなり辛くなって来た。しかし、子供達にはこの姿を見せる事が出来ない!「しんたくーん、次は何して遊ぶ!」彼らのエネルギーは計り知れないです。さて、最後の舞台をどうすればいいのか!?考える時間は約30分程。ある子が言いました「さっき踊ったけど、もっと踊りたいよぉ・・・。」うーん.よし!決まり!即興でダンスを作る事に!!で、珠実さんに相談する。彼女は「おしりふりふりダンス」や色々とアドバイスをしてくれる。なるほどなるほど・・・。でもこれだけではもたない・・・。何かないのか!??本当に考えた脳みそを絞るだけ絞った。で、楽屋で太鼓を叩きはじめ振付けを考える。あーダメだな〜。7歳〜13歳までのバランスを考えるとむずかしい・・・。で、先ほどの羊のメエメエをしながら羊の真似をする事に。おっ!?これはいけるかも・・・。では、「ゾウ」は!?変な動きだ、声を出してもおもしろい。では「掃除機」「洗濯機」「車」「猫」なども考える。とりあえず、最後の公演なのでおもいっきり遊んで踊って歌って、疲れたら舞台で寝る。
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はじめにまくらを持って羊を数えながら舞台に登場「ひつじが1ぴき、2ひき、3びき・・・。」舞台中央に来るとどんどん子供達はうにゃうにゃと寝言の様に言いながら倒れて寝ます。約20秒ほど寝かせました。本当に寝ても言いよと伝える。このまま寝てもおもしろかったですが、ぼくの太鼓の音で少しづつ目覚める。イメージとしては、夢の中の出来事を舞台で表現する。空想の世界を出す方法です。ゆっくりと夢遊しながら起き上がる。そして色々な動物などに変身しながら踊り出す。おもしろいです。途中、インタビューをしながら観客からのリクエストにも子供達は応えました。最後にこんな創作ダンスが出来るとは思っていませんでしたが、本当にすばらしい子供達の表現でした。

ということで、個人的にもとても成長出来た舞台になったなーと感じています。舞台のおもしろさと怖さを同時に感じられた4公演でした。キッズ以外にも、シニア、ミディ、ミドル、オリエント、ヤングのみなさんがそれぞれの舞台までのドラマがあったと思います。最終的に彼らとリンクしながら静かな海に潜る事が出来ました。美しい光景でした。カチカチ、カチ・・・。これからもこの静岡で新しいダンス&アートが生まれる事を願っています。

こどもたちに協力して下さったお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、おねえちゃん、おにいちゃん、弟、妹のみなさま、本当にありがとうございます。そして、舞台裏で支えて下さった、美術館の方々、ミュージアムショップの方々、アーティストの日詰明男さん、制作の方々、ボランティアの方々、お疲れまです。特に色々とわがままを言って迷惑をかけたJCDNの佐東さん、神前さん、本当にお疲れさまです&ごめんなさい。

それとシニア、ミディ、ミドル、オリエント、ヤングのみなさま、4回のステージをよく踊りきりました。あなたたちは凄い。仕事や学校に行きながら毎晩たくさん練習をして、体全てが筋肉痛にもかかわらず笑顔を見せながら踊っていましたね。あの太もものアザも忘れる事が出来ません。それだけみなさんは一生懸命に舞台に打ち込んだでいたのでしょう!静岡ダンス最高です。これからもこの地でダンスを続けて、オリジナルの静岡ダンスを守りながら発信してください。それと打ち上げ楽しかったです。またゆっくりお話ししましょう!

そしてたまちゃん!あなたとの仕事はいつも衝撃的で怖いです。たまちゃんの情熱と執念、そして最高の笑顔でよくみんなをまとめたと思います。とりあえずゆっくり休んで下さい。いつも温かく見守ってくれてありがとう。本当に楽しい舞台でした。また一緒に何か企てましょうね。

最後に子供達へ

ボクを信用してくれてありがとう。しんたくんはいつでもどこでもしんたくんです。また思いっきり遊びましょう。夏休みの宿題は早くしましょうね!それと家ではまくら投げをしないように!!ではー

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by shinta_inoue | 2010-08-03 22:47 | 静岡市美術館プロジェクト
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